LTSが大化けしそうな予感がしているshigeです。
今回は他のブログを見ていて気になった「千年投資の公理」書評のラストです。
前回の記事まででこの本のメインである「4つの堀」については紹介しました。
なので、この記事では残りの章のポイントだけを解説してみます。
当方の様に凡人で、頭の回転が速くなく、数字が苦手で、なるべく人と接したくないと思っている人間にとって、本は自分のペースでじっくり学ぶことのできる最強のツールです。
出版社も利益を出さなければいけないから当たり障りのない内容の場合もありますが、
しっかり勉強して経済的な堀の概要を掴みましょう。



バフェットやオニールたちと比べると今回の著者は知名度が低いですが、日本の投資家による商業色の強い本よりは信頼できると思います。
銘柄選びと同じで本も無名の中から掘り出しものを見つけて記事にできたらいいなと思います。
この記事の内容
8~14章の要点
こんな方におすすめ
- 投資の世界の”堀”って何?という方
- 投資は業績とビジネスモデルを重視しているという方
千年投資の公理
著者 パット・ドーシー
監修 鈴木一之
訳 井田京子
著者紹介
パット・ドーシー
CFA(公認証券アナリスト)、モーニングスター株式リサーチ部門のディレクター。
同社の株式評価システム(モーニングスターレーティング)や経済的な堀のレーティングの開発における中心メンバーの一人。
経済的優位性の事を「堀」と呼んだのはバフェットで、
それにより投資家にも広まったようですね。
今回初めて知りましたw


基本的に社会は競争が当たり前になっています。
しかし、争わなくていいならそれに越したことはない。
特に、当方が保有しているLTSは勝者総取りではなく、利益を分かち合う「IT業界」に所属しています。
身近な視点で考えられそうです。
浸食される堀
新技術の登場に対応できない
かつて栄華を極めた企業や業界がその後の新技術に対応できず、急激に衰えていく事はよくあります。
本の中の例題では
・写真用のフィルムで莫大な利益を上げてきたコダックが、デジタルカメラの登場で今や見る影もなくなっている
・地元のニュースや広告・求人を載せておけば勝手にお金が入ってきた新聞業界。しかし今はインターネットによって大打撃を受けている。
・電話業界もインターネットを使った格安通話でビジネスモデルの崩壊を迎えている。
・音楽業界もしかり
そのデジカメもスマホのカメラが高性能なので衰退しています。
まあ、情報を扱う業界はインターネットの登場によって完全にシェアを奪われましたな。
上記の例題以外ではテレビ業界もそうです。
現時点で、業界全体のスポンサー収入はテレビよりネットの方が上回っていますし、
youtubeなどを使って個人が副業を始めた影響も見逃せません。
また昨今ではテレビ番組内での発言がもう批判を浴びて「炎上」、謝罪という流れになりやすくなっています。
それを受けてか、有名芸能人が事務所を退所してフリー転身、もしくは芸能界引退というニュースも目にするようになりました。
確実に旧態依然としたビジネスモデルは崩壊・・・。





悪い成長
企業がより成長しようとする過程で、”堀”のない苦手分野に挑戦して失敗することも良くある。
本の中の例題ではマイクロソフトが
ズーンという音楽プレイヤーを開発したり。
子供向けの人形を作っていたり。
ヨーロッパのケーブル会社に出資して30億ドル以上損を出したり。
失敗しています。
ただし、マイクロソフトは本業のOSや事務関連ソフトで莫大な利益が上がっているので深刻なダメージにはならなかったが、
超巨大企業でさえ苦手分野に進出すると失敗するという好例ですね。
そういう意味で言うとソフトバンクなんて最早何が専門分野がわからないし、
あちこちに投資しているのでいつ致命傷を負っても不思議じゃないですね。
(含み益を営業利益としているくらいですからw)
そういえば小室哲哉も2000年ごろ経済的堀のあった日本市場を飛び出し、香港に進出。
しかし成果が上げられず失敗。
その後はなんだか警察とかメディアをネガティブな意味で賑わす存在になってしまった。
堀のあった日本市場で圧倒的な地位を築いていたのにもったいない。
逆にテレビ局の例で言うと、
番組制作が落ち目になった代わり、フジとかTBSは不動産業に乗り出しそこそこの成績を収めているようです。
進出する分野を間違えない事が大事ですね。
(数字に関しては各自決算書類を確認してください)
堀を探す
堀を作りやすい分野、作りにくい分野がある
p165に「堀のあるセクターの図」が掲載されています。
ここで興味深いのは「ソフトウエア業界とハードウエア業界」です。
その図が定義している”堀”が何なのかは明記されていませんが、
幅の狭い堀の多さとして
ソフトウエア・・・49%
ハードウエア・・・26%
となっている事です。
ハードウエアは業界標準というものがあってそれに基づき製造されるため、他社製品と取り換えられる。
だから差別化が難しいとの事。
逆にソフトはその標準がないので差別化がしやすい。
その差が出ている図ですね。
お客さんから見ればハードを1つ買えばいろんなソフトが使用できる方が良い。
しかしメーカー側にするとハードの方が利益率は良くても差別化しにくい。
特に最近はPCとスマホが普及しているので、ゲームをする時ハードは使わずインターネット上で直接ソフト(アプリ)をダウンロードしてしまいます。
スイッチとかプレステぐらい有名じゃないとハードだけのメーカーはこれからつらいでしょうね。
銘柄選びをする際、そういったことも参考にしなければいけないと感じました。
指標は?
この本では企業が儲かっているかの指標として「ROE、ROA、ROIC」を使う事が紹介されています。
ただし、ROICは計算するのが面倒なうえ、四季報にも載っていないのでこの記事では省略します。
ROEは株主から提供されたお金をうまく使えているかを計る指標。15%越えていたら良いらしい。
ROAは会社の資産全体が上手く使えているかの指標。7%越えていると良いらしい。
今さら感ですが、「定番の指標」ですね。
ただ、以前の記事でもご紹介したようにROEは借金が増えると数値が大きくなってしまいます。
そもそも完璧な指標はないので、他の指標や業績の伸び率などトータルでどれだけ成長しているかを判断することが大事ですね。
なお、
本の最後の方に銘柄を分析しているページもあるのですが、
詳細は各自でご覧ください。
ミネルヴィニたちの分析に比べると物足りない気もしないではないですが、
場合によっては参考になるかもしれません。
まとめ
・新技術への対応ができなかったり、苦手な分野に進出して”堀”を壊す場合もある
・”堀”が作りやすい分野、”堀”が作りにくい分野がある
総評は「インターネットの登場は革命」だという事。
かつてファミコンが発売されたときはものすごい衝撃を受けましたが、
インターネットが登場した時はそこまでの衝撃はありませんでした。
ただ、こうやって社会の主力産業が入れ替わっていくのを目の当たりにすると、
インターネットの力を痛感せざるを得ません。

既得権益を持っている人たちは戦々恐々ですが、
我々個人投資家にとって非常に面白い展開になってきました。
これからも地味に目立たず資産を増やしていけるように勉強して行こうと思います。
ありがとうございました。