IRJで800万円の利益を得たshigeです。
今回の書評は、はっしゃん氏の決算書3分速読からの10倍株の探し方です。
成長株投資の基本である業績が伸びている企業に長期投資しながら、理論株価を軸にした裏付けを重視している本です。
厳選した銘柄を細かく分析するので、さほど負担にはならないけど買ったら放置という訳ではないのでその点は注意ですね。
この記事の内容
・この本の要旨
・興味深かったところ
・まとめ
こちらも参考に
決算書「3分速読」からの10倍株の探し方
著者 はっしゃん
出版 KADOKAWA
著者紹介
はっしゃん
サラリーマン時代に従業員持ち株会から投資を始め、投資歴は25年。リーマンショックなどで資産を減らす事もあったが、決算分析・理論株価・四季報・月次情報などを武器に30代で資産1億円を達成。
「株ブログ はっしゃんのスロートレード」や「成長株Watch」「月次Web」「理論株価Web」といった監修サイトは、数多くの個人投資家から愛用され累計PVは1億以上。

同じ成長株投資でも当方の様な定性分析の割合が強い投資家にはやや窮屈に思えてしまいます。
ただ、テンバガー銘柄のストーリーの章にIRJがあったので、はっしゃん氏がどういった評価をしているのか気になったので、購入に至りました。
この本の要旨
全部で7章。各章の内容と要点を簡単にまとめると
第1章・・・「成長ストーリーを疑似体験」 ⇒5年分の業績と株価の連動の確認が大切
第2章・・・「決算書10カ条」⇒ 当記事の”2次審査”の事
第3章・・・財務三表をサクッと理解 ⇒ CFは営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスである事。BSはなるべく負債を使わず増えている事。PLは売上2倍で利益も2倍、株価も2倍が原則。コストの増減も時系列で確認する事
第4章・・・PERとROEの深い分析法 ⇒ PERは気まぐれなので、EPSとROEで考える事
第5章・・・5年先の株価を予測する方法 ⇒ 独自シートに決算書の数字をガンガン入力して出てきた答えを分析する
第6章・・・理論株価バリューモデル ⇒ 理論株価がわかれば高値掴み防止&長期保有時の心の支えになる
第7章・・・成長株候補ストック30 ⇒ ”イナゴ”の襲来で空売りの餌食になる可能性が高い
理論株価は簡単に言ってしまうと、「その企業の業績や資産の状況から妥当な株価を割り出したもの」。この点が他の日本人投資家の本との差別化になっています。それ以外にも売上や粗利、純資産や負債などをグラフ化しているので評価に繋がっているのだと思います。
ただ、分析手順はいたってシンプルで3つにまとめられます。
手順1
まず気になる銘柄があったら以下の3項目を確認します。
①決算書1ページ目先頭の売上・経常利益を見る
②5年前から時系列の伸びを見る
③株価と業績の連動性をチェック
上記の3項目はいわば1次審査です。
営業利益ではなく経常利益を見る理由は単発の収支(特別利益・特別損失)に左右されず、通常の企業活動で得られる利益を調べる方が良いと言う事です。
また1年ではなく5年で見た方がその企業の本質や地力がわかりますからね。
ただ、そういう意味なら経常利益ではなく本業のもうけを表す営業利益の方が注目している投資家も多くて良いと思うんですけど。借金増やしたり特別損失があっても、本業が好調なら会社は成長を続けられるはずですし・・・。


そして当方は決算短信より有価証券報告書の方が売上・経常利益は勿論、自己資本比率なども時系列で見れて一石二鳥だと思っています。

・四季報をチェック(はっしゃん氏がやっている手法)
・SNSで話題になっている銘柄
・各種媒体でおすすめになっている銘柄
などです。
過去5年間業績や株価が上昇しているなら次の手順に移ります。
手順2
続いて、以下の10カ条を精査します。
① 売上と利益は増えたか
② 純資産は増えたか
③ 自己資本比率は適正か
④ 今期予想はどうか
⑤ 進捗率と四半期特性はどうか
⑥ 四季報予想と比べてどうか
⑦ 市場コンセンサスと比べてどうか
⑧ 決算状況、差異事由などを確認
⑨ 3年後の企業価値を予測する
➉ 株価はどのように動いたか
①~⑤が決算書の数字を見て分析。
⑥~➉が他の情報と比較して分析です。
各項目についての詳細は本を確認していただきたいのですが、
要は
なるべく借金しないで業績を拡大し、純資産に繋げられているか?
株価も含めた外部からは今後の成長性をどう評価されているか?
と言う事ですね。


当方個人としては、9条の説明で「売上が2倍になれば、利益も2倍になり株価も2倍になる」という言葉が良いですね。時間軸は3年で2倍だそうです。
当方の経験では3年で株価が2倍というのは通常の場合で、営業利益の伸び次第ではそれ以上の株価高騰が望めます。逆に言うと、売上は顧客との関係で決まるのでコントロールできないけど、利益については社内でお金を使わなければいいだけなので、それすらできない企業の株価は上がらないと言う事です。実際、成長企業でも売上100億超えている事は珍しくないですが、直近4年の営業利益率が5%や6%にとどまっている事例が散見されます。
それと市場のコンセンサスって言うのも、買い煽り売り煽りに加えAIによる刹那的取引で結構当てにならない事も踏まえておく必要があります。
手順3
最後の手順は財務3票の数値の確認です。
ご存知の方も多いと思いますが、財務3表は
・損益計算書
・貸借対照表
・キャッシュフロー計算書
の事ですね。
損益計算書については、既にこれまでの業績の伸びについては確認済みなので「売上原価率」「販管費率」「経常利益率」することがポイント。(原価率等ははっしゃん氏独自のシートが役に立つ)
貸借対照表については、場合によっては借金をしてROEを上昇させることも評価される。逆に、現金こそ多いもののそれを有効活用できていない企業は評価されないとの事。
キャッシュフロー計算書については、p104に評価基準が載っているので各自で確認してみてください。まあ、よく見かける基準表ですがねw
売上に対して営業CFが10%以上あると望ましい。
基本的な内容は以上です。
先に述べた通り、長期投資の肝はその企業がどれだけ業績を伸ばせるかですから分析法もシンプルですね。
第4章でPERやROEについての記述もあるのですが、「PERは市場の気まぐれだからあまり気にするな。ROEやEPSなど会社側の努力で何とかなる指数を総合的に判断しよう」とまとめられます。



興味深かったところ
この項では当方が読んでいて興味深かったところを紹介します。
ただし、発表されていない数値に関しては当方の希望が多いに入っています。
その点を割り引いてご覧ください
使うなら中経分析シート
著書の中で即効性のありそうなサービスが上記の3点。
理論株価電卓は1株純資産、自己資本比率、1株純利益を入力して株価を計算するシステム。
決算分析シートは過去5年間の業績を分析するシステム。
中期計画分析シートは今後5年間の業績を自分なりに成長率を予測しながら分析するシステム。
で、やっぱり分析するなら中期計画ですね。
目先の株価にこだわるとどうしても精神的に消耗しますし、そもそも暴落や政治的な事象は予測できませんから。不確実な事を受け入れる前提で投資した方が賢明です。
上記の画像は当方がはっしゃん氏のHPよりダウンロードした中経分析シートに、現時点でLTSから発表されている中経や決算短信などの数値を入力したものです。はっしゃん氏との共同制作物という扱いです。
22年以降のBSとCFは未発表なので当方の独断で予想値を入力。まあ、分析シート自体の使い方を完全に把握していないので、


といった声が聞こえてきそうです。
どうかお許しを。
注意点は以下の通り
・22年以降のBS、CFは未発表なので120%成長を基本とする。
・22年の投資CFは毎年120%成長に販管費4億円増を加味した値
・株価の成長率は20年期の営業利益を起点に、「売上が2倍になれば利益が2倍になり、株価も2倍になる」で計算
2024年時点でLTSの営業利益は20億円。
20年12月の営業利益は4億7800万円。
よって約4.2倍。
20年12月期終了時点の株価は4155円。
なので24年末の株価は17430円。
理論株価の約1.6倍


もしIRJと同じ勢いで株価が上昇したら
最近はAIなどの影響もあり1つの方向に極端な株価の動きになります。なので理論株価以上の動きも想定する価値があります。
例えば当方唯一の成功体験IRJは18年3月期末から21年3月期末にかけて株価がおよそ12.9倍になりました(最大は16.4倍)。
同期間の営業利益は1156百万円⇒4080百万円で3.5倍。
利益0.1倍で株価0.37倍
LTSは4年間で営業利益4.2倍なので
0.37×42=15.5倍
4155円(20年末の株価)×15.5倍=64402.5円






客観的に見てみると、ツッコミどころばかりの分析結果💦
賢明な読者の方々決してマネをしないでください。
まとめ
・5年分の業績と株価の関係を確認する
・10カ条で詳細に分析
・財務3票を確認する
・理論株価電卓や分析シートでシミュレーションする
理論株価を最低ラインにしてそこからどれだけ上放れできるか、って感じですね。
冒頭でも触れたように、分析法としてはオーソドックスなのでそれを強化するための数値という解釈で良いと思います。
当方としては再現性にこだわるのであれば読んでも損はないと思いますが、amazonのレビューの様に手放しでおすすめという訳ではありません。
3年間ログインしなくても良い銘柄を探せるように、相場の状況に関わらず勉強をしていきましょう。
ありがとうございました。