書評 生活

幸せは10人10色。短編集「福袋」 朝井まかて 書評

 

コロナが収束したらまた江戸東京博物館に行きたいと考えている、株と歴史が好きなshigeです。

 

 

今回の記事は朝井まかてさんの「福袋」を扱います。

 

この本は江戸を舞台にした物語の短編集です。

「眩 くらら」を読んで以降、朝井氏の小説に興味を持ちました。

こんなに力のある小説家は久しぶりという印象。

まあ、男女関係の描写は相変わらず苦手ですが、

それ以外の職人とか、ひたむきに生きる庶民とかの話は

面白いです。

 

当方も歴史に興味があるので今後も、

朝井氏の小説のレビューを継続していく所存です。

 

とりあえず今回の記事では当方が気になった物語のレビューをしてみたいと思います。

 

 

この記事の内容

・印象に残った物語の概要

・当方の感想

 

こんな方におすすめ

  • 長編小説を読んでいる時間がない方
  • 気楽に読みたい方

 

 

福袋

著者 朝井まかて

出版 講談社文庫

 

作者紹介

朝井まかて

 

1959年、大阪府生まれ。

2008年、第3回小説現代長編新人賞奨励賞を『実さえ花さえ』(のちに『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』に改題)で受賞してデビュー。

13年に、「恋花」で第3回本屋が選ぶ時代小説大賞、14年に同書で第150回直木賞、「阿蘭陀西鶴」で第31回織田作之助賞、15年に「すかたん」で第3回大阪ほんま本大賞、16年に「眩」で第22回中山義秀文学賞、17年に本書「福袋」で第11回船橋聖一文学賞、18年に「雲上雲下」で第13回中央公論文芸賞、19年に「悪玉伝」で第22回司馬遼太郎賞、同年、大阪文化賞を受賞。他の著書に「ちゃんちゃら」「ぬけまいる」「薮医 ふらここ堂」「草々不一」などがある。

 

福袋

福袋の感想を書いた図

油断大敵

 

江戸で乾物屋を営む佐平が大食いの姉を使って賞金稼ぎをする話。

 

佐平は乾物が嫌いで妻とも気が合わない。

姉のお壱与も食べる事以外は全くダメで、嫁ぎ先から離縁されるほどのボンクラ者。

 

そこで佐平は江戸市中で開催される大食い大会での賞金稼ぎを思いつき、

その賞金で妻との離縁をもくろみ始める。

妻と離縁できれば懇意の愛人と楽しい生活ができるとワクワクする。

 

大食い大会の出場者は男性ばかりの中、お壱与は紅一点の存在。

しかも、ただ食べるだけでなくひとつひとつの味や素材を

豊富な知識で堪能し、上品に平らげるのである。

 

そして最後は、その姿勢が話題となって通人の集まりである「満腹連」が内々で開催する

大食い会で力士と対決することになるのである。

しかし、実はこの大食い会は佐平が賞金を荒稼ぎしていることを快く思っていなかった満腹連の者たちが、

佐平を陥れるために開催したのだった。

 

結局、お壱与は僅差の末力士に負けてしまう。

そして佐平も自身の口が滑って妻と離縁、賠償金を払う事になってしまうが、

当てにしていた賞金がない。

 

さらに本業である乾物屋も、運営を任せていた番頭が利益を不正に出そうとして品質の落ちた鰹節を使いまわし、

悪評に繋がり、廃業に追い込まれてしまう。

 

愛人も他の男性と結婚してしまう事に。

 

佐平はすべてを失う。

 

一方、お壱与はとある武家から「お毒見」の役職を拝命される。

武家の人たちはお壱与が料理を上品に食べる事と、豊富な知識を持っている事が

お毒見にふさわしいと判断したのだ。

 

お毒見の役は一生続く安定業。

お壱与は力強く生きていく事を決心したのである。

 

作者はなぜ本のタイトルにしたのか?

考えられるのは話の構成に「エンターテイメント性がある」という事。

うだつの上がらなかった兄弟が徐々に名をはせていく姿勢。

だけど、最後は男性がしっぺ返しを食らい、女性は上々の出来。

 

 

痛快な物語なので娯楽小説としてのタイトルにしたんでしょうね。

 

それに、少年漫画でよくあるチームでスポーツや格闘の大会でを勝ち上がり、

登場人物のレベルアップ、結束力の向上という王道パターンを彷彿とさせる

物語とも思いました。

 

 

まあ、類は友を呼ぶ。似た者同士集まるを体現した物語でもあります。

満腹連は暇人の集まり。暇な人は良からぬことを考えるので、

佐平も同じ穴のムジナだったという事でしょう。

 

逆に、違う考え方をする人は怒られるので、

佐平から食べるのが遅いと怒られていたお壱与は

ハッピーエンドになるべくしてなったのかもしれません。

 

勝って兜の緒を締める

佐平は自らの言葉ですべてを失いました。

昨今も何気ない発言が炎上して謝罪や降板、失業する場面を見かけます。

 

上手く行っていると天狗になりやすいのは人間なら誰しもある事。

しかし、それではいけません。

 

常に自分を戒め、名声とか富とか俗な事に翻弄されないように気を付けましょう。

 

天狗にならず、勝って兜の緒を締める

 

ひってん

ひってんの感想を書いた図

多様性という言葉好きではない

 

この物語は

寅次と卯吉という二人の遊び人がひょんなことから商売をはじめるという話。

 

ある日ふたりは遊びの帰り、路上で倒れている男性を介抱する。

そしてお礼にかんざし職人だというその男性から、

風呂敷包み一杯のかんざしを受け取る。

 

二人は広小路にむしろを広げそのかんざしを売り始める。

はじめはまるで売れなかったが、ある時江戸にやってきた武家の集団がかんざしを買ってくれて

そこからとんとん拍子に商売がうまく行く。

 

ただし、寅次は相変わらず商売には興味を示さず売り上げを使って遊びに行く始末。

一方の卯吉はお客さん心理を考えたり、銭勘定ができない自分に合った商売のスタイルを考えるようになる。

 

数年後卯吉は江戸市中に数軒の店を出すまで出世をするが、

寅次の消息は不明のまま。

 

物語は卯吉が寅次に思いはせる場面で終わる。

 

単なるアリとキリギリスの話?

一見すると卯吉の成功話に思えます。

しかし、どっちの生き方が良いのかは読んだ人によるのではないでしょうか?

 

本の中にもありましたが、当時の江戸は火事が多く、いつ死んでもおかしくない状況。

だから長屋住まいの人は最低限の物だけ所有し、あとは必要な時だけ借りてくるというスタイル。

ちなみに江戸時代、個人の家に風呂がなかったのも、火事を予防することも理由の一つにあったのだとか。

お金に関しても同じで、将来を見据えて貯めこんでも火事で焼け死んだら意味がない。

もしくは医学が発達していないので、病気にかかったら治療のしようがない。

だから寅次の生き方もある意味正解だと思うのです。

 

もちろん、卯吉が仕入れた団扇を雨に濡らしてしまったのはいけませんが、

誰にも迷惑かけず楽しんで生きていられるならそれに越したことはないでしょう。

江戸の町には今でいう日雇いの仕事がいくらでもあったので、生活する分には困らなかったとも言われています。

物語の最後に、卯吉が寅次と一緒に居た頃を懐かしんでいたのもそのへんに理由があると思います。

 

経済的な成功がはたして本当に幸せな人生なのかと思います。

 

結構「ひってん」は深い話ですね。

 

ちなみにひってんとは江戸時代に流行った言葉で「無一文とか貧乏なさま」を表すようです。

 

 

まとめ

・地味で堅実な人が最強

・経済的な成功が果たして幸せなのか?

 

まとめとしては真逆になりました。

当方としては経済的に成功しにくいなら、自由に生きていた方が良いと思いました。

なぜなら人間は遅かれ早かれいつか死ぬ、からです。

ならば自分のために時間を使いたいですね。

 

おもしろい短編集なのでみなさんも是非一度読んでみてください。

ありがとうございました。

 

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    shige

    年齢 アラフォー

    住居 愛知県

    職業 個人投資家 ブロガー

    町工場勤めから2020年本格的に個人投資家へ転身。 中長期投資なのでファンダメンタルズを重視しています。

    このブログで自分の成功体験・失敗談・ノウハウを公開していきたいと思います。初心者の方に参考にしていただけたら嬉しいです。また、生き方や生活に関する記事もUPしていく予定です。よろしくお願いします。

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