成長株投資の神」の書評、第5回目です。

ミネルヴィニやその仲間たちの実践的な手法を楽しく学んで取り入れていきましょう。
この本は全部で11章からなっていますが、今回は10章と11章を紹介します。
この本の書評はこれで最後です。
この記事の内容
第10章 心理
第11章 最後に
この2点を紹介します。
同じ著者でも1冊の本で語り切れることは限られているので、続けざまに2冊、3冊と読んでいると答えが見つかったりします。
鉄は熱いうちに打て、の言葉通り疑問を忘れないうちにさっさと解決しちゃいましょう。
関連本のまとめ記事はこちら
成長株投資の神 著者 マーク・ミネルヴィニ 訳 山田雅裕
監修 長尾慎太郎 3080円
著者紹介
マーク・ミネルヴィニ
数千ドルから投資を始めて、口座残高を数百万ドルにした。
自分のSEPAトレード法の効果を試すために、1997年に25万ドルの自己資金でUSインベスティング・チャンピオンシップに参加し、
155%のリターンを上げて優勝した。また、自らはSEPAトレード戦略を使って、5年間で年平均220%のリターンを上げ、
その間に損失を出したのはわずか1四半期だけだった。
投資講習会などの啓蒙活動も精力的に行っている。ウォール街で30年の経験を持つ伝説的トレーダー。
心理
この第10章は「苦しい時期をどうやって乗り越えたのか?」がテーマとなっています。
ざっと読んでみると今でこそすばらしい結果を残している投資家4人も、投資を始めたころは
自分で決めたルールを守れなくて損を出していたようですね。
という事は、われわれ凡人も彼らのようになれる可能性が十分あるという事です。
2例だけですが、順番に見ていきましょう。
ルールとプランを守れるかどうかで勝敗が決まる。
239pで
「自分の規律を破ったり、また守れるようになったことはあるか?」という要旨の質問に対して
ミネルヴィニ・・・トレードを始めたばかりのころは、しょっちゅう規律を破っていました。
ライアン・・・基本的な手法から、大きく外れたことは一度もありません。
ザンガー・・・自分の考えや理解にとらわれて、現実からかけ離れることは珍しくありません。
リッチー二世・・・機械的に損切りをするので、その点では規律から外れることはけっしてありません。
と答えています。
「守破離」という言葉があります。
茶道や武道でものごとが上達していく過程の事です。
守破離とは?
守・・・師匠から教えられたことを忠実に守る「基本を身に着ける」段階
破・・・師匠の教えを破り「自分のやり方を模索する」段階
離・・・師匠の教えから離れて「自分のやり方を確立する」段階
株式投資を始める時はたいていセミナーや本で基本を学んで取り組むと思います。
これが「守」の段階。
最初はそこで学んだ基本通りに行っているのですが、そこそこ利益が出てくると「儲け損ねた」という場面に遭遇します。
となると「こうやったらもっと儲かるんじゃないか」と考え、基本を破った方法を試し大損します。
これが「破」の段階。
そして辞める人が出てくる一方で、本気で取り組んでいる人は自分の失敗から学び、売買タイミングを変えたり
短期トレードから中長期投資、バリュー株投資からグロース株投資などへ投資スタイルを変更します。
これが「離」の段階。
失敗なしに成功することはないといいますが、投資の場合も同じようで大損した後どうするかですね。
特にネットや各メディアの情報は買い煽り、売り煽り、金融不安にあふれています。
そういった雑音に惑わされない為に、「ルールとプランを持っておくことがとても重要」とミネルヴィニは言っています。
ルール・・・「損失が○○%になったら機械的に損切る」
プラン・・・「ベースとピボットポイントを抜け、ブレイクアウトしたら買い注文を出す」「20%値上がりした半分売って、残りの半分で大きな利益を狙う」
です。
当方の場合、急いで取引をした時は99%失敗します。
個人投資家の最大の武器である「いくらでも時間をかけて良い」というメリットを自ら放棄し、丸裸の状態で機関投資家が
集っている銘柄に乗り込んでいる時です。
それを少しでも減らして、中級者から上級者へ昇格したいものです。
ポイント
ルールとプランを守れるかどうかで勝敗が決まる。
無理にトレードしない
243pで
「自分の手法が通用しなくなっている事をどうすれば察知できるか?」という要旨の質問に、
ミネルヴィニ・・・あらゆる戦略が再び役に立つときに備えることに集中します。
ライアン・・・市場は必ず利益が伸びている会社の株に戻ってきます。
ザンガー・・・2~3か月以上は様子見をして、トレンドが形成されるまで待ちます。
リッチー二世・・・正常なドローダウンはどれくらいであるべきかを現実的に考えておく必要があるのです。
と答えています。
サッカーの試合だってそうですよね。
片方のチームが一方的に攻撃し続ける事なんてありません。必ず攻守交代するタイミングがあります。
それは戦略とか戦術が悪いという事ではなく、どんな選手でも90分走り続ける事は出来ないので、
大事な時だけ全力を出して、あとは適当に流しておく事が最も効率が良いという考えの表れだと思います。
日本の株式市場は昨年の春・夏はグロース株(成長株)が有利でした。しかし秋になってバイデン政権誕生が囁かれると
政策期待からそれまで値下がりしていたバリュー株に資金が移動しました。
まさに攻守交代です。
その間、掲示板はグロース株の会社の社長に対する批判コメントがあふれていましたが、別に社長が悪いわけでなく短期的な流れが変わっただけなのです。
短期的な流れは思惑で動きますから、熱気が冷めるとライアンの言葉通り「利益が伸びている会社」の株価が最終的に伸びると思います。
株式投資は動けば動くほど損をします。
「となりの億万長者」には
「わたしたちが取材した億万長者の42%は過去1年間株を動かさなかった 142p」
とあります。
上手く行かない時は次の成長の準備段階です。
チャンスが向こうからやってくるまで自分の取引を反省して、その他の時間はyoutubeでも見て遊んでしまいましょう!
ポイント
無理にトレードしない。株式相場は動けば動くほど損をする。
最後に
トレード初心者に向けて「上手くなる為にこれをしろ!」という内容の章。
今までの総まとめといったところ。
特にこの記事では省きましたが、質問11の5(262p)「自分の五大トレードルールは何ですか?」は
必読です。
情報と感情の損切が大事
253pで
「今までで一番大きかった課題は何か?」という要旨の質問に対し、
ミネルヴィニ・・・規律を常に維持し、「今回にかぎり」という考えをやるめることでした。
ライアン・・・新しい考え方に適応するのが、最も乗り越えがたい障害です。
ザンガー・・・チャートをきちんと読めるようになるのが何よりも難しかったです。
リッチ―二世・・・危機を脱することです。
と答えています。
専業トレーダーでやっていると、リッチー二世の様に生活費を稼がなければという焦りから不利な条件でトレードをやってしまい大損する。
チャート上はもう売りサインが出ているのに「まだここから上昇するだろう」という思惑のみで保有。そしてナンピンを繰り返し大損する。
自分の取引を分析・反省せずに同じ間違いを何度も繰り返して大損する。でも、次の取引でもそれを繰り返してしまう。
賢明なる投資家4人もこんな単純な失敗をしていました。
それにしてもどうして焦ってトレードしてしまうのか?
そもそも投資を始めた理由を考えると
・会社員としての給料が少ないので不足分を稼ぐ為
・老後の資金を自分で用意する為
・投資が好きな為(ギャンブル・ゲーム感覚)
・トレーダーになりたかった為
が典型でしょう。
下の2つはともかく、上の2つの理由で始めた人ならそんなに急がなくてもいいはずです。
なのにどうして焦るのか?
それは「同じ結果なら時間をかけなかった方が効率が良く、しかも他人からの評価も得やすいという思い込みがある」為だと思います。
投資を始めた時はマイペースでやっているから良いんです。
しかし、相場の下落などを経験していくうちに「自分のやり方は正しいのだろうか?」「他の人の意見の方が説得力あるな」とか考えて
いつの間にか他人との競争になってしまうのです。
これでは負けて当然です。
中長期投資のルールで株を買ったのに、短期投資のルールで株を売っているのですから。
投資家として成功するために何より必要なのは、「余計な情報や余計な感情の損切」なんですね。
ポイント
成功するためには情報や感情の”損切”が大事。
最高のメンターは自分自身
265pで
「初心者へのメッセージは?」という要旨の質問に、
ミネルヴィニ・・・良い手本となる人、自分が達成したいことをすでに成し遂げている人を見つけなさい。
ライアン・・・ウィリアム・オニール、インベスターズ・ビジネス・デイリー、マーケットスミス、マーク・ミネルヴィニが出しているすべての出版物を読みなさい。
ザンガー・・・「オニールの成長株発掘法、欲望と幻想の市場」を読みなさい。
ニッチー二世・・・3つのM、「マーケット、メソッド、マイセルフ」に焦点を当てなさい。
と答えています。
つまり「先人から学び、1つの手法が身に付くまで粘り強く時間をかけて努力する」という事ですね。
当方の場合、投資を始めた頃はデイトレードで取引回数が多く、そのほとんどが負けでした。
すぐに資金が半分になり始めてから1年で撤退。
それから10年以上開けて中長期投資家として株取引を再開しました。
再開した頃は昼間工場で働いていたので取引回数の少なさをカバーする為、ファンダメンタルズの勉強をして
1回当たりの利益額の大きさを狙うようにしました。
もちろん空売り失敗、先物の失敗など経験して株を辞めようかと思いましたがIRJで莫大な利益を得てから
自分の上手く行くパターンというものが見つかった気がします。(今でもつまらない失敗をしていますが・・・)
これが当方のペースなんだと思います。
有名投資家の本を読むことは「基本」でしかありません。
成功するためにの「応用」の部分を作るには自分の失敗から学ぶことが肝要です。
自分の失敗は自分しか知らないので、最高のメンターは自分自身なんです。
このブログを書いているのも、ブログでも書かなきゃ取引を振り返る事なんてないからです。
そしてそれが他の方の参考になればうれしいですね。
ポイント
先人から学びつつも最高のメンターは自分自身である。
まとめ
・心理については「ルールとプランを守れるかどうかで、勝敗が決まる」「無理にトレードしない」
・最後については「情報と余計な感情を損切りする」「最高のメンターは自分自身」
これでこの本の書評はすべて終了です。
11章すべてを振り返ってみるとルールに沿った損切りや、無理せずできる投資法を見つけることが大事なんだという事ですね。
単純なノウハウだけで言えば前作の「成長株投資法」の方が有益ですが、こちらは4人の投資家の信念とかブレないスタンスに
ヤル気をもらった感じです。
当方としては他の記事でも触れた通り、ミネルヴィニの保有期間や▲10%は最終的な損切ラインだった
という事が知れて良かったです。
銘柄の見つけ方、売買のタイミング、相場との付き合い方など盛りだくさんでしたが、何かこの記事に吸収できるものがあったのなら幸いです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。